偽りの仮面 第18話


意識を失い倒れ伏したスザクは、身を盾にするようにルルーシュを抱きかかえたまま蹲り、そこで動きを止めた。

「おい、しっかりしろ!!」

いくら怒鳴りつけても返事はない。
完全に意識を失っていた。
こんな無茶をしてまで何で俺を守ったんだ、この馬鹿が。と、ルルーシュは意識を無くした偽ゼロの拘束からなんとか逃れ、おそらくスザクだろう男をを抱えて逃げようとしたが、似た体型の男だというのにその体は重く、引きずるのが精々だった。

「くっ、こんな所でお前を失うわけにはっ・・・!」

だが、ゼロの努力はそこまでだった。
全身にバチリと電流が走り、目に火花が飛んだ。
反射的に顔だけ振り返ると、園にいたのはブリタニアの一般兵。

「くっ・・・」

意識が偽ゼロに集中したことで、注意が散漫になっていた。
俺も、捕まるのか。
薄れ行く意識の中でそう考えていたが
幻聴か、よく知った声が耳に届いた。

「申し訳ありません、今はゼロ様の身の安全を優先いたします。偽ゼロ様を救い出せるのは、ゼロ様だけだという事、お忘れなきよう」

男の姿だというのに、聞こえる声は女のものだった。



意識が戻った時、クラブハウスのベッドで横になっていた。
見慣れた天井、体に馴染んだベッド。
全ては夢だったのではと思える状況に、ルルーシュは困惑しながら身体を起こした。

「ようやく起きたか、眠り姫」
「・・・C.C.か」

やはり夢か。
妙に生々しい夢だったが・・・。
そう考えた時体に痛みが走った。
そこは先ほど夢の中でブリタニアの一兵卒に、恐らく電気ショックを与えられた場所だった。恐る恐るその場所に触れると、C.C.はすっと目を細めた。

「時間が無いから質問はするな。・・・偽ゼロがブリタニア軍に捕まった」
「・・・っ!!アイツは無事か!?」
「お前をここまで運んだのは、そこにいる人物だ」

質問はするなという言葉通り、C.C.は質問に答える気は無いらしい。
指示された方へ視線を向けると、そこには咲世子が立っていた。
先程まで、そこに誰もいなかったはずだと、ルルーシュは息を呑んだ。

「咲世子は日本でいう忍者だ。この程度造作も無い。今までもずっと・・・偽ゼロが現れたあの日からずっと、咲世子はお前を、ゼロを陰ながら守っていた」
「咲世子さんが・・・俺を・・・!?」
「偽ゼロの正体は、言うまでもないな」
「C.C.、お前知ってっ!!」
「偽ゼロのマスクには通信機が仕掛けられている。それは今もオンのままで、あのマスクが剥がされていないことは確認済みだ」
「・・・まだ、バレていない?」

普通に考えれば、その素性を調べるために仮面などすぐに剥がすはずだ。
それなのに、いまだ偽ゼロの顔を確認していない?
普通ではあり得ない状況に、それでなくても困惑した頭がますます混乱した。

「だが、それも時間の問題だろう。コーネリアは偽ゼロを買っている。お前が思っている以上に、偽ゼロを高く評価していたらしくてな。だからまずは交渉し、ブリタニア軍へ引き込もうとしている。それが可能ならば素性は隠したまま、あるいはコーネリアとギルフォード、ダールトンの3人だけは知っておくようにするのか・・・どちらにせよ」
「・・・素顔を見られる可能性は出てくる。今はあくまでも一時的な、奇跡のような状況だという事か」
「そういうことだ。問題は、あいつは元々ブリタニアの軍人だったという事だ。それなのに、ゼロに加担するような真似を続けていた」

それは完全な裏切り行為。
最初からブリタニア軍を裏切っていたのだから、信じるには値しないと判断されるだろう。だから正体が知られれば、いくら高い能力を持っていても間違いなく・・・

「時間が無い、すぐに騎士団に戻る」
「どうする気だ?」
「策はある。これを機に政庁を落とし、日本を開放する」

とんでもない発言が飛び出し、流石のC.C.も目を丸くした。

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