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意識を失い倒れ伏したスザクは、身を盾にするようにルルーシュを抱きかかえたまま蹲り、そこで動きを止めた。 「おい、しっかりしろ!!」 いくら怒鳴りつけても返事はない。 完全に意識を失っていた。 こんな無茶をしてまで何で俺を守ったんだ、この馬鹿が。と、ルルーシュは意識を無くした偽ゼロの拘束からなんとか逃れ、おそらくスザクだろう男をを抱えて逃げようとしたが、似た体型の男だというのにその体は重く、引きずるのが精々だった。 「くっ、こんな所でお前を失うわけにはっ・・・!」 だが、ゼロの努力はそこまでだった。 全身にバチリと電流が走り、目に火花が飛んだ。 反射的に顔だけ振り返ると、園にいたのはブリタニアの一般兵。 「くっ・・・」 意識が偽ゼロに集中したことで、注意が散漫になっていた。 俺も、捕まるのか。 薄れ行く意識の中でそう考えていたが 幻聴か、よく知った声が耳に届いた。 「申し訳ありません、今はゼロ様の身の安全を優先いたします。偽ゼロ様を救い出せるのは、ゼロ様だけだという事、お忘れなきよう」 男の姿だというのに、聞こえる声は女のものだった。 意識が戻った時、クラブハウスのベッドで横になっていた。 見慣れた天井、体に馴染んだベッド。 全ては夢だったのではと思える状況に、ルルーシュは困惑しながら身体を起こした。 「ようやく起きたか、眠り姫」 「・・・C.C.か」 やはり夢か。 妙に生々しい夢だったが・・・。 そう考えた時体に痛みが走った。 そこは先ほど夢の中でブリタニアの一兵卒に、恐らく電気ショックを与えられた場所だった。恐る恐るその場所に触れると、C.C.はすっと目を細めた。 「時間が無いから質問はするな。・・・偽ゼロがブリタニア軍に捕まった」 「・・・っ!!アイツは無事か!?」 「お前をここまで運んだのは、そこにいる人物だ」 質問はするなという言葉通り、C.C.は質問に答える気は無いらしい。 指示された方へ視線を向けると、そこには咲世子が立っていた。 先程まで、そこに誰もいなかったはずだと、ルルーシュは息を呑んだ。 「咲世子は日本でいう忍者だ。この程度造作も無い。今までもずっと・・・偽ゼロが現れたあの日からずっと、咲世子はお前を、ゼロを陰ながら守っていた」 「咲世子さんが・・・俺を・・・!?」 「偽ゼロの正体は、言うまでもないな」 「C.C.、お前知ってっ!!」 「偽ゼロのマスクには通信機が仕掛けられている。それは今もオンのままで、あのマスクが剥がされていないことは確認済みだ」 「・・・まだ、バレていない?」 普通に考えれば、その素性を調べるために仮面などすぐに剥がすはずだ。 それなのに、いまだ偽ゼロの顔を確認していない? 普通ではあり得ない状況に、それでなくても困惑した頭がますます混乱した。 「だが、それも時間の問題だろう。コーネリアは偽ゼロを買っている。お前が思っている以上に、偽ゼロを高く評価していたらしくてな。だからまずは交渉し、ブリタニア軍へ引き込もうとしている。それが可能ならば素性は隠したまま、あるいはコーネリアとギルフォード、ダールトンの3人だけは知っておくようにするのか・・・どちらにせよ」 「・・・素顔を見られる可能性は出てくる。今はあくまでも一時的な、奇跡のような状況だという事か」 「そういうことだ。問題は、あいつは元々ブリタニアの軍人だったという事だ。それなのに、ゼロに加担するような真似を続けていた」 それは完全な裏切り行為。 最初からブリタニア軍を裏切っていたのだから、信じるには値しないと判断されるだろう。だから正体が知られれば、いくら高い能力を持っていても間違いなく・・・ 「時間が無い、すぐに騎士団に戻る」 「どうする気だ?」 「策はある。これを機に政庁を落とし、日本を開放する」 とんでもない発言が飛び出し、流石のC.C.も目を丸くした。 |